【自宅看取り】①決断するまで:迷っている人へ
自宅看取りを勧めている記事ではありません。
仕事でケアマネジャーとして「自宅看取り」の支援をしてきた中で、私自身が大切な家族を自宅で看取るという経験をして、迷ったり悩んだりしている人の少しでもお役に立てることがあればと思い立ちました。
看取りとは
- 死期が近づいた時期を「終末期」もしくは「ターミナル」といいます。
- 終末期において治療による延命をせず、苦痛や不快感を減らして、自分らしい最期を過ごすための支援をすること。
延命処置とは
根治が見込めない患者に対して、人工呼吸や輸血、輸液などによって延命を図る(死期を引き延ばす)ことを目的とした治療のこと。点滴や酸素吸入することで改善する場合は延命治療とは言いません。
以前は、死期が迫った時、医療機関は患者本人の意思や希望は確認せず、医療技術を駆使して延命をしてきました。そして、患者も家族も医師にその判断を任せてきました。
人間は最期になると、体が食べ物を受け付けず自然と食べなくなります。それでも家族としては何らかの栄養を与えたり点滴などをしてもらいたくなります。
点滴だけでもしてもらいたくなるのは家族としては仕方がないのですが、無理に点滴をすることで、体がむくんだりして返って心臓に負担をかけることになったりします。
近年では、最期の時期に医療処置をあまりしないほうが、本人は楽に過ごせるという考え方に変わってきています。
しかし、最期の時に延命処置を希望するかしないか、本人の意思を確認することは難しい場合がほとんどです。その場合は家族が代わりに決めなければいけません。家族が何人かいる場合は、それぞれに希望が違ってきてトラブルになることも多くみられます。
医師の立場としては、自分の家族であればこれ以上の延命処置はしないが、家族からの訴訟など不測の事態を招かないために、延命だけを目的とした処置の続行もやむをえないという状況があります。
延命処置を”する”か”しない”かを決めることは、非常にデリケートな問題です。
また、どこまでを延命処置と考えるのかも人それぞれです。
病気に対して主治医が全て判断をし、治療を行うというオーソドックスな形ではなく、治療の開始、不開始などの決定に際し、患者本人または家族の意向を最大限尊重することがより重視されるようになりました。このため、人を見ずに、病気だけを診て治療をする形で、延命治療が行われることについては、許容できない人が増えてきました。健康長寿ネット:看取り
リビング・ウィル(終末期にある患者の意思)とは
病気などで意思表示が出来なくなった時に備えて、治療などの希望をあらかじめ残しておく事前指示書を「リビング・ウィル」といいます。
「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も、尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビングウイル(LW)です。日本尊厳死協会
どこで、どのように最期を迎えたいか
私自身は、治らないのにたくさんのチューブに繋がれて病室の天井だけを見て逝きたくありません。
住み慣れた家の風景やぬくもりを感じて、BEATLESを聞きながら最期を迎えたいと思っています。
でも、家族は1日でも長く生きてほしいと願うかもしれません。
または、家族は仕事などで忙しく自宅では無理と言われるかもしれません。
自分の意志を家族と共有しておくことが非常に重要になります。
エンディングノート
「終活」ブームでエンディングノートの名前は聞いたことのある人も多いと思います。
万一の時に残された家族に自分の意志を残すことができ、エンディングノートはとても役立ちます。
例えば
<終末期の介護や治療の希望>
- 最期をどこで迎えたいか
- 延命処置を希望するかしないか
- 延命処置はしないが、苦痛を取り除く緩和治療は希望する......etc
<葬儀に関すること>
- 知らせてほしい人のリスト
- 流して欲しい音楽
- 供養のこと.....etc
ネットで調べると、たくさんの有料無料のエンディングノートの情報があります。
無料ダウンロードして使えるエンディングノートで、私が良いなと思ったのがMicrosoftのOffice テンプレート ⇒ エンディングノート
※注意
- 法的な力はないので、遺産問題などのトラブルを防ぐには遺言書を作成して、遺言書があることを明記したうえでエンディングノートがあることを伝えておきましょう。
- 1度記入しても、気持ちが変わったり環境の変化などがあるので、定期的に見直すなどが必要です。
自宅で看取りはできるの?
極端な話ですが、一人暮らしでも可能です。
必ず必要な準備
- 訪問診療医
- 家族の覚悟
最低限、この2つがあれば可能です。
<訪問診療医>
- 息を引き取る時に医師がいなくても問題はない。
- ただし、1度でも訪問診療をしていなければ「死亡診断書」が書けない。
医師が訪問しないまま息を引き取ると、警察による検死となってしまいます。
エピソード
我が家は、決断から退院まで1日しかなかったので、とにかく訪問診療医を決めることを真っ先にしました。金曜が退院日だったので、土日に何かあったら困るので退院した当日の金曜に初回の訪問をしてもらいました。
<家族の覚悟>
- 病院では医療職が看取りますが、家では家族が看取ります。
- 延命や救命を望まない限り、自宅でも病院でもすることに差はありません。
- 看取りへの不安や恐怖は24時間対応の訪問看護にいつでも相談できます。
最期の時に慌てて救急車を呼んでしまうと、救急隊は救命救急が使命なので処置をしなければならず、病院へ搬送されてしまいます
家族間では自宅看取りの話し合いができていても、親族が訪問した際に驚いて「なんで救急車を呼ばないんだ!」と言う状況になることもあります。例えば妻が夫の看取りを献身的にしていたとしても、夫の兄弟が久しぶりに現れて妻が非難される。そのようなことを避けるためにも事前に知らせておいたり、エンディングノートに残しておくことが大切です。
あとは、頼れて信頼できるケアマネジャーがみつかると安心です。
とても頼りになる冊子 ⇒「はじめての在宅医療」
次回は「【自宅看取り】準備から旅立ちまで」を予定しています。
私自身の自宅看取りを決断するまでの記事