【自宅看取り】④大切な人を亡くした人の悲嘆回復について
グリーフ(悲嘆)とは
人は死別を経験すると、「喪失感」と「立ち直りの思い」が共存して二つの間で揺れ動き不安定な状態になります。そして身体的にも様々な反応を経験します。これを「グリーフ(悲嘆)」と言います。
壮絶な悲しみ
「喪失感」という言葉は知っているし、仕事は高齢者の方が対象のためパートナーを亡くしているケースも多く、ケアマネジャーはその人を理解するために「喪失感」の部分も確認が必要である。
私は「喪失感」の何もわかっていなかった。
そして、真の「喪失感」は、同じ経験をした人にしかわからないということを知った。
外へ出ると、夫婦やカップルの2人連れがたくさん目についてしまう。
当たり前のように夫婦で過ごした日々が、どれだけ貴重で輝かしいものであったかを亡くしてから気付いた。
スーパーの食材を見て、「今日はこのお魚にしようね」という他愛ない会話をしていた相手に、二度と会えないのである。
『こんなに苦しむのなら、あの喧嘩をした時に離婚していれば良かった』とか、わけのわからないことを考えてしまったり、あの日から自分の世界はめちゃくちゃで、まったくの別人になってしまった。
この数年は自分のすべてをパートナーのために暮らしていたので、悔いはないと看取りに臨んだけれど、そんなことは何にもならない。
一瞬でも、「会いたい」という思いがよぎってしまうと、会いたくて会いたくて会いたくて何もできなくなってしまう。
夜、布団に入るとぽろぽろ涙があふれて、『お願いだから、迎えに来て』と祈る日々。
何とか立ち直ろうと、友人に会ったり何かをしようとしたけれど、動悸が激しくなってどうしていいかわからなくなってしまう。
私はこのまま気が狂うかうつ病になってしまうのかもしれない・・
絶望の中でもがいているときに出会った本「家族を亡くしたあなたに」を読んで、自分の状態がおかしいことではないと知りました。焦らずに、段階を踏んでいかないと悲しみが長引いてしまうのです。
著者は臨床心理学者で、自身も息子を17歳で失っています。
レビュアー
抜け出せない虚無感に何年も囚われているのは自分だけなのかとネガティブになっていましたが、そうではないことがこの書籍を読み分かりました。回復(日常を取り戻す)までのプロセスがあり、自分が現在どの位置にいるか知りえたことで先行きの見通しが立ち少し気持ちが楽になりました。
著者が自身の死別体験を基に、遺された者の心の動きを事細かに説明してくれています。私が言葉にできない思いを代わりに言葉にしてくれているようで、とても共感できました。悲しんでもいい、死別は人生最大の苦しみなのだからと寄り添ってくれます。けれどいつか必ず乗り越えられる、と励ましてくれます。また、様々な死別のケースを紹介し、死別の悲しみを克服するために私たちが取るべき道を示してくれています。
グリーフワーク(悲しみを癒す作業)
死別の悲しみのプロセスには、5つの段階がある。
ただし、はっきりした境界があるわけではなく、次の段階にうまく移行できたように思っていたのに、突然思い出がよみがえってきたりパニックに陥ったりしますが、それは正常なことで良く起こることだということ。
- 第一段階:ショック
- 第二段階:喪失の認識
- 第三段階:引きこもり
- 第四段階:癒し
- 第五段階:再生
医師の垣添 忠生氏は妻を亡くして、悲しみを紛らせるために酒に救いを求め、アルコール度数の高いウイスキーや焼酎などの飲酒で食事は摂れなくなり痩せていったそうです。
そこからグリーフケアとグリーフワークを通じて乗り越えた記事も参考になります。
職業柄、人の亡くなる場面には何度も立ち会っていますが、医師でも看護師でも国が違っても関係なく、大切な人との死別がもたらす悲しみはコントロールができません。
おわりに
今この記事を書いている私自身は、パートナーを亡くして約3か月。
プロセスでは第2段階と第3段階を行ったり来たりのところではないかと思います。
プロセスを踏まないことで、人によっては何年もかかったり「引きこもり」状態から抜け出せない人もいるようです。私は早くにすばらしい本に出合えたことで、悲しんでいいんだと、引きこもっていいんだと、自然な流れに任せようと思えるようになりました。
「悲嘆」にある人は、外見的には何も変わらず目に見えないので、元気そうに見える人ほど「悲嘆」を否定して無理をしているかもしれません。
死別を経験した人、近くに死別を経験した人がいる人、ぜひ「家族を亡くしたあなたに」を手に取ってください。
そして、この「家族を亡くしたあなたに」の本を紹介してくれているサイトの「愛する人を亡くした人のための100の言葉」もきっと力になってくれるはずです。
【自宅看取り】シリーズはこれで最終回になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。